坂本真綾「CLEAR」が名曲すぎるので作詞作曲編曲の目線でレビューします

鈴木将太(@shaunthesloth)です。

テレビアニメ「カードキャプターさくら クリアカード編」のオープニングテーマ、坂本真綾さんの「CLEAR」が名曲すぎて感動しています。
どうしても感想を書きなぐりたくなったので、ここの歌詞がいいここのコード進行がいい、という風にレビューしてみたいと思います。

はじめに

たまたま昨年、CCさくらのアニメを全話見たばかりでした。妻が買っているクリアカード編の漫画も読んでいます。

アニメを見る前からOP・ED曲はどれもすでに知っていて、特に3期OPの「プラチナ」が大好きです。コード進行だとか転調だとか、ストリングスアレンジだとかベースのリズムだとか、何時間でも語っていられます。

そしてなにより、アニメを全話見た今ならなおさら、プラチナという楽曲に思うことは「さくらっぽい」ということ。
歌詞はもちろんですが、楽曲が持つ透明感や疾走感、形のないもやもやとした不安、作品の雰囲気や木之本桜というキャラクターを体現しているような印象です。

クリアカード編のアニメ化が決まったと聞いたとき、正直なところ「OPはプラチナを超える楽曲になることはないだろう」と思っていました。
楽曲のトータルクオリティも、作品に寄りそう雰囲気も、私個人としての思い入れも、プラチナが強すぎたからです。

そして、MVの視聴が開始されたのが2017年末でした。プラチナと同じくらい好きか、もしくはそれ以上か・・・こんなにも大好きになれる楽曲がリアルタイムで聞けていること、すごく幸せに感じています。

まだ聞いたことない方は、ぜひMVをご覧ください!

坂本真綾「CLEAR」MV


(何度聞いても名曲すぎてつらい)

歌・作詞は坂本真綾さん、作曲はいきものがかりの水野良樹さん、編曲は河野伸さんです。河野伸さんはJpopの作編曲だけでなく劇伴作曲家としても数多くの作品に携わられている方です。

ここ1,2年は坂本真綾さんの曲を聞きまくっており、いきものがかりはデビュー時から大好きで、美しいストリングスアレンジに弱い私です。作家陣の名前が出た段階から大変楽しみになっていました。

作詞の目線でレビュー

歌詞や楽曲の雰囲気に大きな影響を与えている「CLEAR」というタイトル、ぱっと思い浮かぶのは、透明・透き通っている、という雰囲気。それと、ゲームクリアとかの達成的な意味合い。

もちろん、この曲のタイアップが「クリアカード編」ということで、そこから取っているのも大きな理由かと思われます。
作品のストーリーにも寄り添い、さくらちゃんの心情も現れているような素敵なタイトルです。

私より自由かな

冒頭のサビ歌詞がすでに最高なので、まずは引用します。

風って 鳥って 私より自由かな
翼がないなら走ってくわ 行きたいところまで
できるよね
Going on!

「風」「鳥」というのは、Jpopの歌詞でよく登場します。
風は心情と重ねやすく非常に使いやすい言葉で、風だけでなく天候全般が歌詞に利用しやすいです。
鳥は人間が飛べないからこそよく対比される存在。歌詞の視点も動かしやすいです。

そういったワードに対して「私より自由かな」と返しています。「本当にそうなのかな?」という前向きな疑問を表現してるように感じました。

普通に考えたら、翼がなくて飛べないなんて鳥と比べたら不自由だよなって思っちゃいます。
けれど「翼がないなら走ってくわ 行きたいところまで」と続きます。行きたいところにいけたり、好きなことをできたりすることが、主人公が思う「自由」なのだと。

できるよね

そしてかなりの衝撃を受けたのが「できるよね」というフレーズ。
すべてのサビで登場するフレーズですが、まず「できる」という言葉が「CLEAR」というタイトルにかかっていますよね。

「よね」って、自分が思っていることなどについて相手に同意を求めるような時に使うと思うのですが、最初聞いた時に感じたのは「相手がいるわけじゃなくて自分に対して同意を求めている」という印象でした。

たとえば、本当にできるか不安だったら「できるかな」とか、大丈夫だと思っていたら「できるはず」とかいう言葉選びがストレートな表現で、「できるよね」という言葉選びが、主人公が自分の心と対峙している様子が映像として浮かび上がるようでした。

坂本真綾というアーティストの楽曲として意識してみると「自由は自分で見つけられる、君ならできるよね?」というメッセージにも聞こえます。

当たり前のようなフレーズながら、この5文字に色々なものが詰まっているようです。
もちろんメロディに乗せた時の語感も意識されてると思います。「できるよね」のメロディ本当に最高ですから。

そのほか歌詞で思ったこと

・AメロBメロは短く言葉数少ない中、テーマの説明が的確
・泉、色、形など、透明感のあるワードチョイスが素敵
・サビ2の「できるよね」に向かっていく展開が綺麗
・低年齢層でも分かりやすい言葉選び
・プラチナとの共通した世界観や価値観(同作品なので当然かもです)

作曲編曲の目線でレビュー

音楽的な目線で感想を書いていきます。

コード進行はアレンジに沿って近いものを選んでみてはいますが、間違っている部分もあるかと思います。あくまでも参考までに。

シンコペーションがたくさん登場するので、分かりやすくするために出来るだけ省いて記載しています。

冒頭サビの直前ですが、2小節くらいの長さでふわっとしたピアノとウィンドチャイムが鳴っていますね。F音の連打っぽく聞こえるシンセもたまらんです。

曲頭としてはよくある手法かとは思いますが、プラチナの冒頭も歌とパッドのリバースサウンドから始まるのでどことなく意識されている気はします。

【コード進行】
|F9|%|

0:03~不安と希望

サビから楽曲が始まります。サビ1の後半部分から引用になりますね。

アコギとエレキ、ストリングスとピアノが優しく歌を支えていきます。4小節目の「B♭→A」と「G→G♭」がF音に向かっていき、シンプルながらも歌と綺麗に混ざり合っています。

4小節目以降のさりげないグロッケンが良くて、5~6小節目のチェロがお手本中のお手本みたいな動きしてるし、美しさを極めています。

特に印象的だと感じたのが、歌詞「できるよね」の部分、サビ9~10小節のところ。
ベースラインがD→C→Bと加工していきますが、プラチナのサビ後半でも同様の進行が登場するため、おそらく意識してのオマージュなのではと思います。

そのあとピアノの白玉で一瞬楽曲が止まり、ドラムのフィルとストリングスを合図にすべてが解放される感じ最高です。

曲頭のサビは唯一、IVM9から始まっていきますが、他のサビはIもしくはVIm7から始まります。
希望に満ちた感じにも不安に溢れた感じにも感じ取れるような、透明なガラスにも曇りガラスにも感じられるような幻想的な雰囲気ですよね。

サビが終わったあとは短い間奏に入り、キーのルート固定でコードが動いていきます。これまでの浮遊感とは全く逆に晴れやかな様子になりますね。
コードの動きに沿って下降していくストリングスも面白いです。

【コード進行】
|BbM9|F9onA|Dm9|C7onF F7b9|
|BbM9 Bbm6|FonA Dm9|Gm7|Em7-5 A7|
|Dm7 AmonC Bm7-5|%|%|
|F FonA|BbM7 BbM7onC|

|F|ConF GonF|ConF|GonF GbonF|

0:30~歌を支えるフレーズとリズム

Aメロが始まってからもしばらく、ベースがFのまま続いていきます。左右でアコギとエレキがコード感をサポートしていますね。

特に1~2小節目のG音ベースと、メロディラインをなぞるピアノがシンプルなのに印象的なんですよね。全ての楽器が歌を引き立てるために存在しています。

あと、ものすごくスネアの音が好みです。迫力のある音ながらも華やかさがあってすごく合ってる。どうやったらBFDでこんな感じの音作れますか?

リズムは2小節ワンセットのシンコペーションで、ラストの8小節目で裏拍のキメっぽくなりますがコード進行と相まってスムーズにBメロへ進行していきます。

Bメロはめまぐるしくリズムが変わるのが面白いです。付点8分の連続から裏打ち、Aメロと同じく2小節ワンセット、シンコペーションの連続、テンポを半分に落とし、ラストはサビに向けてキメ。なんと美しい。

3小節目で登場するEbM9がいい味出しています。ダイアトニックコード以外からの借用が世界観をぐっと広げています。

サビ前のキメはコードの横移動に「FF G A F CC」というフレーズが乗り、サビ入りの「これって」への繋がり方がスムーズで、音選びもリズムも最高。

【コード進行】
|F|ConF|BbonF|F ConE|
|Dm7|G7onB|BbM7|C Dbdim|

|Dm7 Am7 BbM7|% FonA Gm7 F|EbM9|Dm7|
|Gm7 FonA|Bb FonA|Gm9|G7onB|
|Gm7onC Am7onD Gbm7onB Gm7onC|% Gb7(9,#11)|

0:56~主役の歌を支える各楽器

サビはあんまり言うことないです。ただただすごい。

鮮やかに動くストリングスが美しすぎます。メロディの間で駆け上がったり、コードの美味しい音を包み込んだり。

冒頭でも美しさを極めていたチェロがここでも大活躍で、伸びやかな歌を支えたり、バイオリンとユニゾンになったりソロで動いたりしていますね。

各楽器が主張しすぎることなく、歌を支えるための役割を全うしている感じです。
たとえば自分なら「できるよね」のところなんて、メロディと一緒にストリングスも高音まで上げていっちゃいそうなところですが、大人なアレンジです。本当に勉強になる。

曲頭のサビとは違い、前半はIから、後半はVIm7から始まります。単純にリズム隊が入ってるからというのもありますが、透明感や開放感、ストレートな感情が伝わってくるようです。

【コード進行】

|F|ConF|Dm7|Cm7 EbM7onF|
|BbM9 Bbm6|FonA Dm7|G7sus4 G7|Gm7onC ConE|
|Dm7|Am7|BbM7 BbM7onC|EbM7onF|
|BbM9 Bbm6|FonA Dm7|Gm7|Em7-5 A7|
|Dm7 AmonC Bm7-5|%|
|F FonA|BbM7 BbM7onC|

(ShortMV)|F|ConF GonF|ConF|GonF GbonF|F|
(アニメ版)|F|ConF GonF|F|

おわりに

1番と2番とかの細かいアレンジの違いも素敵だし、サビ2あとの間奏のシンセもかっこいいし、Cメロで一気に雰囲気落としてラスサビに向かうのも美しいし、ラスサビで転調するのも更なる開放感を生み出すし。

Jpopとしてもアニソンとしても最高峰のクオリティだと感じています。自分が単純に坂本真綾さん好きってのもありますが、全力でお勧めしたい1曲です。

カップリングに収録されてる、作曲が堂島孝平さん、編曲が矢野博康さんの「レコード」もちょろっと試聴しましたが良い曲の匂いしかしません。

坂本真綾さんの「CLEAR」は2018年1月31日発売です。みんな!買うんだ!